イエメン

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イエメンの基本データ
国名 イエメン共和国
首都 サナア
人口 約2400万人
国土面積 52.8万k㎡
地域 中東
栽培されている主な種 アラビカ種
主な処理方法 ドライ(ナチュラル)
生産量 約2万t
主な生産地 イスマイリ、マタリ
代表的な商品名 モカ・マタリ

イエメンは、アラビア半島に位置する共和制の国家です。
歴史的に国際輸送の要所に位置し、紀元前の昔から多様な民族、国家、宗教がかわるがわる支配権を有してきました。
国として現在の形に落ち着いたのは2000年のことで、国家としての発展をまさに開始したところと言えますが、現在でも民族的・宗教的な紛争が続いており、前途多難とされています。

イエメンはエチオピアと並ぶ、世界で最も古いコーヒー文化と歴史を持つ国の一つで、世界で始めて商業的にコーヒーの輸出を始めた国です。
17世紀にはヨーロッパ各地へ大量のコーヒーが輸出され、出荷に使用された港の名前を取って「モカ」というブランドで呼ばれました。
ただ、同時にエチオピア産のコーヒー豆もモカ港から出荷されることが多く、差別化するためにイエメン産は「イエメン・モカ」「モカ・マタリ」、エチオピア産は「モカ・ハラー」「モカ・シダモ」と産地国や地名をつけて呼ばれるようになり、その名称が現在でもブランドとして使用されています。
また、モカ港はコーヒーノキの苗やコーヒーの種子が(大半はこっそりと)他国へ持ち出された港でもあり、あらゆる意味で世界のコーヒーの故郷と呼べる港といえます。

砂漠地帯に隣接するイエメンは、中南米やアフリカ大陸などに比べるとあまりコーヒー栽培に適しているとは言えず、産出量もさほど多くはありません。
しかし、コーヒー産業の始まった土地として世界的な知名度は非常に高く、コーヒーに関する主要国の一つとして数えられています。
日本では、1961年に発表された「コーヒールンバ」(原曲は1958年にJose Manzo Perroni(ホセ・マンソ・ペローニ)が作曲した「Moliendo Café」(モリエンド・カフェ))が大ヒットしたことで、コーヒー好きでなくともモカ・マタリの名称だけは広く知られるようになりました。

イエメンでは昔ながらの伝統的なコーヒー栽培が行われていますが、それは主に歴史的に貴重なコーヒーを保護するためという動機からではなく、単に農業が産業的に重要ではない(立地的に農業が拡大しづらい)ことと、急斜面にコーヒー農園があることが多く機械化がしにくいため、と言われています。
ほぼ有機農法で栽培も処理作業も基本的に人の手で行われますが、主な生産処理ドライ(ナチュラル)プロセスであることなどから生豆の流通品質はあまり高くなく、異物や欠点豆(特に欠損豆発酵豆、豆のかけら)の混入レベルが尋常でなく高いのが特徴とされます。
これは技術的に未熟であるためというよりは、単純に「コーヒーとはこういうもの」と考えてられていて、ピッキングで全体品質を向上させるという考え自体があまり一般的ではないためではないかと推測されます。

もし、モカ・マタリなどイエメン産のモカを生豆で手に入れることができたなら、一度ハンドピックしてみてください。
しっかりと分けようとすると、(グレードにもよりますが)半分近くまで減ってしまう可能性もある程欠点豆が混じっていることに気付くはずです。
しかしモカについては、実際に完璧に近いレベルでハンドピックを施すと、印象的な酸味や「モカ香」と呼ばれる独特の香味が消え、軽くて特徴のない平凡な味わいになってしまうといわれています。
通常、一粒でも混じるとコーヒーの香りをダメにしてしまう、といわれている発酵豆でさえ取り除くとなんとなく物足りないため、その発酵臭もモカ香の一部であると考えられているほどです。
若干の発酵豆や未熟豆、くず豆など、単独では飲めたものではないはずの欠点豆が混じることで、なぜか絶妙なバランスの独特なおいしさを生み出しているのが、イエメンのコーヒーなのです。

そのため、他の産地のコーヒーに比べてイエメンのコーヒーはやや好みが分かれるところがあり、万人向けのコーヒーとはいえません。
ただ、例えば強烈な匂いのするチーズや発酵食品、独特の味わいを持つ珍味的な食べ物に熱狂的な愛好家がいるように、イエメンのモカにも「これでなくてはダメ」というレベルのファンが多数いるようです。
特に、モカ・マタリの中でも最高グレードとされる「No.9」は、「コーヒーの貴婦人」と称されることもある程。
印象的な酸味もあってか、高級な赤ワインに例えられることもある名品と言われています。

イエメンでは、品質による全体的なグレードわけはされておらず、地域自体が格付けされています。
基本的にはマタリがもっともグレードが高く、続いてサナア、シャーキ、ホデイダと続きます。
それぞれの地域の中では豆のサイズや品質による上下があり、バニマタル地区(マタリ)はNo.9が最高ランクでNo.6まで、サナアは品質的に平均より上か下かの区別だけなど、かなり複雑になっています。
ちなみに、これらの格付けはあまり厳密に行われていないらしく、生産量の少ないはずのマタリが大量に出回っているなど、グレードがあまり信頼できない状況のようです。

かつては日本の喫茶店でも高級で通好みのコーヒーとしてもてはやされた名コーヒー、モカ・マタリ。
生産量や品質の確実性が担保できない状況などから、信頼できるお店やロースターからでなければ買いにくいブランドですが、それでも一度良品にあたると苦労してでも何度でも飲みたくなる程の魅力を持っています。
もし、幸運にも高品質なイエメンコーヒーに出会えたなら、その唯一で絶妙なバランスをすみずみまで味わってみてください。

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