コーヒー豆は、「コーヒーチェリー(コーヒーノキの実)」として収穫され、様々な処理を受けて「コーヒーチェリーの種」から「生豆」となり流通しますが、飲むことができるのは焙煎されたあとです。
近年では自家焙煎を楽しむ人のために生豆のまま小売されているケースもありますが、一般的には商品としてのコーヒー豆といえば焙煎した状態のものを指します。
コーヒーについてほとんど知らない方でも、「浅煎り」「深煎り」といった言葉はご存知なのではないでしょうか。
ここでは、この「焙煎」について解説します。
焙煎ってどんなこと?
焙煎とは「炒る」こと、つまり水分や油分を使用せず、ドライな状態で加熱することです。
伝統的な手法としては、加熱した鉄板や鍋の上で焦げないようにゆすりながら炒ることがあげられ、焙煎機を使用しない場合は現在でもこの方法が一般的です。
焙煎機はいろいろなタイプのものがありますが、基本的には「直火式」「熱風式」に分けられ、両方の特徴を併せ持つ「半直火式」というタイプもあります。
コーヒー豆は焙煎の程度によって味が変わる上、最終的に挽いて使用しますので、外側から内側まで均一に加熱することが重要になります。
焙煎の目的
生豆を焙煎する目的は、一言で言ってしまえば「おいしく飲むこと」に尽きるのですが、分類すると大きく三つに分かれます。
- 水分を飛ばす
コーヒー豆は流通前の生産工程で乾燥させられますが、この時点でもまだ10%強の水分を含みます。
焙煎が進んでいっても、水分が多く残る部分(主として中心部)は温度が上がりづらく、水分の少ない部分(主として外縁部)より変化が遅れてしまいます。
これを避けるため、まず豆全体の水分量を上手に減らす必要があるのです。
- 臭みを消す
- 香味を整える
2番とも共通する部分がありますが、コーヒー豆の持つ香味成分は焙煎度合いによってめまぐるしく変化します。
焙煎中に揮発して抜けていくものや、逆に内部に閉じ込められるように残るもの、熱によって増えるもの、減るものなど、変化の仕方や度合いは様々ですがそれによってコーヒーらしさが現れてくるのです。
そして、ここからが特に重要なことですが、この変化の仕方や成分は豆の産地や種類ごとに大きく異なっています。
単純に「浅煎りが良い」「深煎りがおいしい」というものではなく、その豆の特徴に合った焙煎が必要になってくるのです。
焙煎の度合い
豆ごとに適切な焙煎の度合いが違うとなると、「最適な煎り具合」を追求していくと浅煎りや深煎りといったカテゴライズだけでは曖昧すぎるということになります。
実際ここにこだわるメーカーでは、30を超える分類で煎り分けているケースもあるそうです。
ただ、余程のマニアでなければ消費者側としてはそこまで詳細な分類を知る必要はありません。
現在では、生豆を除いて以下の8段階に分類するのが一般的となっています。
シナモンロースト |
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特徴 | ライトロースとより若干焙煎が進んだもの。シナモンのようなきれいな薄茶色のものが多い。まだ香りに青さが残る。 |
シティロースト |
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特徴 | 一般的な「中煎り」。苦味、甘み、酸味のバランスがよく、適合する豆が多い。「シティ」は「ニューヨークシティ」のことを指すらしい。 |
フルシティロースト | ||
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特徴 | 焙煎が進み、カラメルのような甘みを感じる。苦味が強く出るようになり、酸味はあまり感じられない。 |
フレンチロースト | ||
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特徴 | コーヒー豆の中でもかなり黒っぽい色合いになる。酸味はほぼ感じられず、香ばしい焙煎香と強い苦味が際立つ。表面に油がにじみ、つやつやしてくる。 |
イタリアンロースト | ||
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特徴 | 焦げてるんじゃないかと思うほど真っ黒に。強烈な苦味と香りが楽しめる。中までかりかりに焼きあがっているので、中煎りに比べて軽く挽くことができる。ぺたぺたするほどの油がにじんでくる。 |
ライト・シナモン・ミディアムローストが浅煎り、ハイ・シティ・フルシティローストが中煎り、フレンチ・イタリアンローストが深煎りに分類されます。
それぞれの味わいや香りの表現は飽くまで一般的なもので、前述の通り豆の性格によって大きく異なります。
どの豆にどの段階の焙煎を施すか、それによってどんな香味を引き出すかが各メーカーの特徴であり腕の見せ所でもあるといえます。
もし近隣に複数軒、自家焙煎をしているショップがあるのであれば、同じ産地、品種の豆を買ってきて比べてみるのもいいかもしれませんね。