コーヒーベルトとは、北回帰線と南回帰線の間の、赤道を中心として地球をぐるっと取り巻くベルトのように示すことのできる地域を指します。
(赤道を中心として、おおよそ南・北緯25度ずつの部分です)
コーヒーノキが育つために必要な条件が揃った地域であるため、現在商業的にコーヒー栽培が行われているほぼ全ての産地がこの中に含まれているとされます。
コーヒーノキ、特にアラビカ種は丈夫な種類の植物ではなく、うまく環境面の条件が整わないと育てることができません。
コーヒーノキが育つ必須条件としては、一年で一番寒いときでも霜が降りない程度の温暖な気温と、年間2000mm前後の適度な雨量が挙げられます。
ただし気温は高ければ良いというわけではなく、平均気温が20度前後という日本の初夏程度の気候が良いとされており、さらに一日中同じような気温ではだめで、昼夜のできるだけ大きな寒暖差が必要です。
雨も、一年中しとしと降り続けるような地域ではなく、雨季と乾季のはっきりわかれるような、一時期にまとまった雨が降るような地域が理想とされています。
そのため、コーヒーベルト内でも低地では条件が整わず、1200mから2000m程度の高地が生産地として選ばれているのです。
環境が整ったからといって、コーヒーノキの苗木を植えてあとは放置しておけばよいかというと、そうではありません。
コーヒーノキの成長には十分な日光が必要ですが、直射日光には弱いためシェードツリーなどを一緒に植えて適度な日陰を作ってあげる必要があります。
水はけが悪すぎたり風の通りが悪いと病気が発生し、農園全体に大きなダメージを与えることもあります。
樹自体があまり強くないため、ハリケーンや洪水などの自然災害のあまり発生しない地域を選ぶことも大切です。
そもそも、コーヒーノキは実を収穫できるようになるまで10年前後かかるため、その間この手のかかる植物を守り続けなければならないのです。
そのため、コーヒーベルト内でも先進国でのコーヒー栽培はあまり行われておらず、一部の例外を除いて人件費の安い発展途上国が生産の中心となっているようです。
もちろん、科学技術の発達した現代では、コーヒーノキの育成に必要な条件を人工的に作り出すことは不可能ではありません。
実際、他の農作物ではビニールハウスなどでの通年栽培は珍しくなく、工場で製品として作られる作物さえもあります。
ハウス内などの安全な環境で育てることができれば、コーヒーベルト内だけではなく、いまよりも多くの地域で安定的にコーヒー豆を生産できるようになるかもしれません。
しかし、そうした人工的な環境を作り出し維持するには当然お金がかかります。
特に、比較的大型で収穫までに長い年月のかかるコーヒーノキを人工栽培しようとすると、膨大な費用がかかってしまうでしょう。
現在のコーヒーの平均価格からすると、そうした投資とそれによって得られる効果がつりあわないため、いまのところハウス栽培などは実現していないようです。