コーヒーは酸化などによって香味が変わりやすい飲み物であり、エスプレッソなどは秒単位で味が変わっていってしまうと言われています。
そのため、抽出してしまったあとのコーヒーの賞味期限は非常に短く、長めに見積もってもせいぜい数時間です。
これはお茶も同じで、ちょっと冷めてしまった程度ならともかく、冷蔵庫にも入れずに一日経過してしまったお茶は、たとえ衛生上は飲めたとしてもおいしく飲むことはできないでしょう。
では、抽出前のコーヒーやお茶の賞味期限はどうでしょうか?順を追ってみてみましょう。
焙煎したコーヒー豆は、揮発性の香味成分がガスとなってどんどん抜けていってしまいます。
また、表面に浮いてくる油分が酸化することで嫌な酸味を持ち胃に重く感じられるようになってしまうため、やはり長くは持ちません。
しっかり密封して冷蔵庫で保存したとしても2週間程度、チルドパックなどに移して冷凍保存でひと月以内が限度といえるでしょう。
「焙煎したコーヒーは生鮮食品と同じ」という表現もうなづけます。
お茶はというと、そこまで足がはやくはないものの、やはり開封後はできるだけ早めに飲んでしまったほうがいいようです。
高級なお茶ほど繊細な香りや味わいが消えていきやすく、また湿気や他の食べ物などの匂いを吸ってしまう恐れがあるからです。
未開封の場合、お茶の種類やメーカーによって期限が異なりますが、緑茶や紅茶の場合はおおよそ数ヶ月~1年未満となっているようです。
コーヒーの場合、焙煎する前の生豆の状態であれば、焙煎後の豆よりはずいぶん長く保管しておくことができます。
収穫されて数ヶ月程度の若い豆を「ニュークロップ」、やや時間が経ったものの1年までは経過していないものを「カレントクロップ」、1年以上経過して古米ならぬ古豆状態になったものを「バーストクロップ」、2年以上経過したものを「オールドクロップ」と呼びますが、これだけの分類が意味を持つほど保存がきくということですね。
豆の状態や品種によっては、まだしっかり水分が残ってしまっているニュークロップよりも、少し水分を抜いた後のカレントクロップの方が風味が良くなっていることもあるとのこと。
ロースターによっては、しっかりとした温度・湿度管理の下で保管することで、オールドクロップとは思えない熟成した味わいを引き出す手法を取り入れている人もいます。
またインドには、帆船貿易時代の環境を再現することで10ヶ月かけて熟成を促す「モンスーン」という手法もあります。
お茶の場合は、緑茶などでは生豆のような熟成をさせることはできませんが、発酵茶であれば長期間寝かせておけるものがあります。
プアール茶や烏龍茶などの中国茶は、適正な環境で寝かせておくことで、ワインのようにそれぞれの成分が調和しあい、より深い味わいになるといわれています。
また、日本でも焙じた後で寝かせておく「三年番茶」という手法のお茶が知られており、カフェインやタンニンなどの刺激成分が適度に抜けて体に負担がかかりにくくなるとされています。
ただし、これらはすべて「適正な環境下」で寝かせた場合のお話。
単に放置していただけのコーヒー豆やお茶がいつの間にかおいしくなる、ということはほとんどなく、通常は味や香りが抜けて残念な味になってしまいます。
また、乾燥しているとはいえコーヒー豆にも茶葉にも数%の水分が残っているため、環境によってはカビが生えてしまうことも。
熟成させた製品として販売されているものは別として、個人ではやはりできるだけはやく飲んでしまうのが一番といえるかもしれません。