コーヒー豆は、コフィア属に分類される「コーヒーノキ」という植物の種子を加工したものです。
コフィア属の植物はかなり種類が多いようですが、現在世界中で飲まれているコーヒーを生み出しているのはそのうちのわずか2種類、アカネ科アラビカ種とアカネ科カネフォラ種に属する品種です。
カネフォラ種は、その中でも特に有名な品種からロブスタ種とも呼ばれます。
この2種だけで、全世界のコーヒー消費量の99%以上を生産しています。
コーヒーノキは熱帯・亜熱帯地方で育つ多年生の植物で、冬に気温が下がりすぎる地域では育てることができません。
しかし、一年中同じように暑い地域でもダメで、昼夜の寒暖差が激しいほど良質なコーヒーが育つといわれています。
そのため、現在栽培されている地域は赤道を中心とした一定の区間、いわゆる「コーヒーベルト」内に集中しており、この中でも標高の高い地域のものほど高いランクをつけられて流通しています。
(一般的に植物は昼夜の寒暖差が大きいほど果実や種子に脂質を多く溜め込もうとするとされており、これが香味に良い影響を与えているという説が主流のようですが、多くの場合そういった科学的な根拠によるというよりは経験的に判断されているようです)
コーヒーノキの栽培はアラビカ種とカネフォラ種で異なっており、アラビカ種は種子から、カネフォラ種は挿し木によって苗を育てます。
種子から育てる場合はコーヒーチェリーの外皮や果肉、ミュシレージと呼ばれる甘い粘液質を取り除き、内果皮(パーチメント)を残した状態で土に植えます。
苗床で10ヶ月程度育成されたあとコーヒー農園で定植され、3年目から5年目くらいで花を咲かせるようになります。
コーヒーノキに花が咲くのは降雨のあと。
白く可憐な花が一斉に開花しますが、この花は2~3日であっという間に散ってしまうそうです。
その短い間に受粉が行われ、青い小さな実が結実。
8~10ヶ月ほどをかけてゆっくりゆっくりと成長し、真っ赤に熟した時点で収穫となります。
コーヒーノキの花は雨のあとに一斉に開花しますが、一本の木に咲く花は無数にあり、それらが一年のうち一回とか二回だけまとめて咲くわけではありません。
雨が降ったタイミングで、その時開花できる状態の花が一斉に咲くのです。
すると、雨が降るたびに花が咲くことになり、一本の木、一本の枝の中でも、成熟の度合いの違うコーヒーチェリーが混在するようになります。
よく真っ赤に熟した実とまだ未成熟な実が同じ枝についた写真などがありますが、あれはこのような開花タイミングの差によって起こるのです。
未成熟な実から採れたコーヒー豆は独特の良くない風味を持つため、本来はしっかり熟した実から順に収穫していくべきですが、低品質な豆を生産する農園では、手間や人件費の関係から完熟の実も未成熟の実もいっぺんに収穫してしまう生産者もあるとのこと。
逆に、手間を惜しまずに実の状態を確認しながら収穫する農園のコーヒーは(それ以外の要素にももちろんよりますが)良質なものが多いようです。
残念ながら、最近までコーヒーの生産に携わる人々への報酬は不当に低く、品質の向上に意識を向けられる農園は少数でしたが、近年では消費者の意識も変わりつつあり、良質な製品に正当な対価が支払われるケースも増えてきています。
この動きが広まっていけば、よりおいしいコーヒーが飲めるようになっていくかもしれませんね。
コーヒーノキは、植物の品種としてはやや弱い部類に入り、低温や強風、霜、直射日光などに弱いとされています。
そのため、適度な日照が得られる場所を選んで植えつけられたり、風や直射日光をさえぎるための木、いわゆる「シェードツリー」を一緒に植えることで環境を整えています。
シェードツリーはいろいろな木が利用されていますが、気候と葉の大きさからバナナの木などが選ばれるようです。
こうして大切に育てられたコーヒーチェリーは10ヶ月ほどで収穫期を迎えます。
コーヒーノキはもともと数mから十数mにまで成長するため、自然に育てられた木からの収穫でははしごなどが使用されることもありますが、大抵は収穫しやすいように1.5mくらいに剪定してあります。
大規模農園では機械を使用した収穫も行われているようですが、ほとんどの農園では現在でも人の手で収穫しているようです。
アラビカ種は完熟すると枝から実が落ちてしまうため、木を軽く揺らして落ちてきたものを収穫したり、落ちるようになる前に頻繁に収穫します。
ロブスタ種は枝から落ちることはないため、塊が全体的に熟すまで待ってから収穫することができますが、コーヒーも過熟すると品質に影響するため、丁寧な生産者はやはりよく観察して頻繁な収穫を行っています。
コーヒーノキ一本あたりの生産量は、1シーズンあたりコーヒーチェリー5~6kg程度。
ここから、コーヒーの生豆1kg前後をとることができます。
集められたコーヒーチェリーはこのあと何度も選別されながら、いくつかの工程を経て出荷できる生豆の状態になるのです。