フェアトレードとは、生産者と正当な価格で取引することでその生活を保護し自立を促す、商取引の仕組みです。
コーヒー業界でのフェアトレードは、主に欧米のNPOやNGOが中心となって行われており、近年では日本からもいくつかの団体が参加しています。
コーヒー豆やカカオなどを生産している国の中には、もともと植民地として支配されていた国や貧困などのために立場の低い国が多く、慣習的に不利な条件で生産物を買い取られているケースが少なくありません。
また、国際的な市場の情報や最新の技術、設備などに触れることができないため、現状にどんな問題があるのか、どうしたら改善できるのかを知ることも困難です。
もし努力して価値ある作物を育てても、他国のバイヤーや流通に関わる業者が多額のマージンをとっている場合も多く、生産者に十分なリターンがあることは稀だと言われています。
そのため、一部の主要なコーヒー生産地だった地域では、コーヒー栽培が別の産業に取って代わられることで廃れてしまったり、品質が大きく低下するなどの問題が起こってきました。
このような業界構造的な問題から脱却するためにはじまったのが、フェアトレードという活動なのです。
コーヒーの取引価格は、ブラジルやベトナム、コロンビアなど大きなシェアを持つ国の豊作・不作によって年毎に変動し、ある年は前年の2割増しの価格で売れたのに、次の年はその3割程度の価格にしかならない、というケースもあります。
フェアトレード団体は、この国際相場がどのように変動したとしても、生産者の生活が十分守られる価格を保障して買取を行います。
(相場価格がこの保障価格より高ければ、もちろん相場のほうに合わせます)
生産者は相場変動による価格の下落を心配することなく、生産活動に専念することができるようになります。
また、団体によっては小規模な農園の経営者を集めて勉強会を行ったり、新しい機械を導入することで国際的な競争力を高める活動も行っています。
これにより、支援が終了してからも自分たちで高価値な製品を生み出し、自立していくことができるようになるのです。
このように生産者を守るフェアトレード活動ですが、だれもが賛同しているわけではありません。
フェアトレードの製品は高い割りにおいしくない、フェアトレードという看板で販売しており品質が伴わない、などの批判も一部にあるようです。
消費者側の視点で言えば、もっと安く高品質な製品が購入できるのにわざわざ高くておいしくないほうを買うことはない、という理屈も分かります。
団体によってはどのような活動をしているか、どんな結果が出ているかが分かりづらく、全面的に信頼することができない、というケースもあるようです。
しかし、フェアトレードによって流通するコーヒーが高いというのであれば、いま普通に流通するコーヒー豆の方が生産者にとって「不当に安い」ものであると言い換えられるはずです。
今のルールに基づいた取引が続けば、いずれ高品質なコーヒーを作ろうという農園が減っていくのは間違いないでしょう。
大規模農園で機械的に生産されるコーヒーが主流になり、地域ごと、農園ごとの工夫や地理的な差によるバリエーションは、不効率なものから姿を消すはずです。
そうなったときに、最終的に不利益を被るのは消費者側ではないでしょうか。
情報開示の問題については、フェアトレード団体側の姿勢改善や努力が求められる部分もあるかもしれません。
なかには本当の活動内容が表明しているものとかけ離れているようなケースもあるため、協力する側にもリテラシーが求められるのは確かです。
現在は面倒な資料の取り寄せなどをせずとも、インターネットを通じてある程度の情報は集めることができます。
例えば、国際的なフェアトレード団体である「Fairtrade International(フェアトレード・インターナショナル) 」と、日本での構成団体「Fairtrade Label Japan(フェアトレード・ラベル・ジャパン)」では、活動状況やレポートはもちろん、認証企業や製品の情報などもHP上で公表しています。
自分が納得できるまで調べた上で、信頼できる団体が販売している製品を購入するようにしましょう。
おいしくはない、と言われ続けてきたフェアトレードコーヒーですが、それでも次第に品質や味わいが改善してきているものも少なくないと言われています。
これも、各団体の努力の賜物だといえるでしょう。
今日飲むためのよりよいコーヒー豆を求めるのは自然なことですが、これからも同じようにおいしいコーヒーを楽しむためには一消費者としてなにを選択していくべきか。
フェアトレードを一つのきっかけとして、考えてみるのも良いかもしれません。