収穫されたコーヒーチェリーは、当然ながらそのままではコーヒーになることはできません。
それどころか、水分が多く腐りやすいその実のままでは流通も困難です。
そのため、基本的には収穫された地域の処理施設でいくつかの工程を経て、生豆の状態になってから全世界へ出荷されることになります。
この処理工程は大きく分けて「ドライ」と「ウェット」に分けられており、「ウェット」はさらに「ウォッシュト」と「パルプト・ナチュラル」に区別されます。
それぞれどんな手順を踏むのか、一つずつ見てみましょう。
ドライ(ナチュラル)
もっとも単純な工程を踏む手法といえます。
コーヒーチェリーの果肉がついたまま乾燥させるので、泥などを落とすために洗う必要があり、かつ広大な乾燥場が必要になります。
もともとはコーヒーの原産国であるエチオピアなどで行われていた一番古い手法で、各国にコーヒー栽培が広がっていくなか、ウェットの手法に必要な大量の水を入手しづらいブラジルなどで採用されるようになりました。
ウェットに比べて酸味が穏やかで、風味の控えめなすっきりとした味わいに仕上がるといわれています。
ウォッシュト
ウォッシュト
- コーヒーチェリーをタンクに溜めた大量の水の中に投入する
- 果肉を取り除き、ミュシレージが残った状態で別のタンクに移す
- そのまま数日水につけておくことでミュシレージが発酵し、分解して取り除かれる
- ミュシレージの下のパーチメントが残った状態で水から引き上げ、1週間~10日ほど乾燥させる
- 脱殻してパーチメント、シルバースキンを取り除く
全工程を通じて大量の水が必要になる手法です。
果肉を取り除いた後と乾燥させた後に、選別を行って欠点豆を取り除く工程があるため、全体に品質の高い豆が生産できます。
ドライの手法に比べて手がかかりますが、その分評価も高く、高級な種類の豆に適する処理方法といえるでしょう。
現在は昔ながらの発酵処理のほか、機械にかけてミュシレージを取り除く方法をとっている生産者もあるようです。
パルプト・ナチュラル
パルプト・ナチュラル
- コーヒーチェリーをタンクに溜めた大量の水の中に投入する
- 果肉を取り除き、ミュシレージが残った状態で引き上げて天日干しし、1~2週間乾燥させる
- 脱殻して、ミュシレージ、パーチメント、シルバースキンを取り除く
ドライとウォッシュトの中間のような工程を踏む手法です。
ミュシレージと呼ばれるぬるぬるとした甘い粘液層を残したまま乾燥させるのが特徴です。
ドライに比べて手が多く入る分選別もでき、ウォッシュトのように大量の水も必要ありません。
ドライの手法と同じ様に、ブラジルなどで採用されているようです。
なお乾燥時に完全乾燥させず、脱殻後に生豆の状態で乾燥させる「ウェットハル」という別の手法もあります。
これらの工程を踏み、生豆の状態になったコーヒー豆は、色やサイズによって分けられて等級別に出荷されます。
そして、生産地域が単一で香味の優れた「スペシャルティコーヒー」から、大工場でインスタントコーヒーやコーヒー風味飲料の原料となる「コマーシャル」まで、それぞれの等級と役割ごとに異なった国や企業へ購入されてゆくのです。