パナマの基本データ |
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国名 | パナマ共和国 | |
首都 | パナマ | |
人口 | 約350万人 | |
国土面積 | 約7.5万k㎡ | |
地域 | 北アメリカ | |
栽培されている主な種 | アラビカ種 | |
主な処理方法 | ウォッシュト、ドライ(ナチュラル) | |
生産量 | 約1万t | |
主な生産地 | ボケテ、ボルカン | |
代表的な商品名 | エスメラルダ・ゲイシャ |
パナマは、北アメリカに位置する共和制国家です。
北アメリカと南アメリカ、そしてカリブ海全域に関する要所に存在し、スペインによる植民地化以降20世紀末まで諸外国による統治権争いに翻弄され続けてきました。
1999年にようやく国土全域の主権を掌握し、現在は完全独立国家としての道を歩み始めています。
各国の思惑が絡み合っていたため逆に紛争や内乱が抑えられていたこと、アメリカ統治時代にドルが流通しラテンアメリカの金融の要として機能していたことなどから現在でも金融業を中心産業としており、1914年に開通したパナマ運河の運用益や多様な自然保護区を主とする観光業からの収益もあって、近隣諸国の中でも高い経済水準を保持しています。
経済の発展に反比例して、コーヒーを始めとする農業全体は輸出産業としての重要性が低く、コーヒーもほぼ全生産量が国内消費という時代が長く続きました。
パナマでもっとも古いコーヒー栽培は19世紀後半、ボケテ地区で始まったとされていますが、輸出がスタートしたのは20世紀の始めで、その後もヨーロッパの一部にわずかに出荷される以外、国外ではほとんど知られていませんでした。
そのため他のコーヒー生産国とは違い、生産性が低くても良質なコーヒー豆が期待できる品種や新しい品種など、実験的な栽培がしばしば行われていたようです。
近年、爆発的な人気を博している「ゲイシャ」も、そうした実験的栽培品種のひとつだったといわれています。
世界的にコーヒー業界に大打撃を与えたサビ病に強い品種としてコスタリカから持ち込まれたのが最初とされていますが、記録をたどる限り当時のパナマでサビ病が流行していたということはなく、はっきりした動機はわかりません。
その上、サビ病に対する耐性も一定以上の高地でしか発現せず、しかも他の品種よりも手がかかって生産性が低いということで、当時は結局植えられたゲイシャのうちほとんどが別のものに植え替えられてしまいました。
しかし、それらの農園のうちの一つ「エスメラルダ農園」のオーナーが試しにその木から取れたコーヒー豆を飲んでみたところ、これまでに無かったようなすばらしい香味だったため栽培を継続。
そしてこの実が、ちょうど同時期に開催されるようになったカップオブエクセレンス(COE)で今までにない超高値で落札されたことで、それまでほぼ無名だったゲイシャ、そしてパナマ産コーヒーに注目が集まるようになったのです。
それ以降、ゲイシャがCOEに出品されると必ず二位以下の何倍という高値をつけるぶっちぎりの一位となってしまうため、通常枠のゲイシャ出品が停止。
パナマ各地でも他の農園がエスメラルダ農園にならってゲイシャの栽培をはじめ、2010年以降はゲイシャだけのCOE特別部門まで設定されることとなりました。
現在では世界各国でゲイシャの栽培が始まっているようですが、もともと成長に時間がかかる上に非常に手間のかかる品種であるため、今のところエスメラルダ農園に匹敵するようなクオリティのものはでてきていないようです。
パナマでは生産地の標高によってグレードが分けられており、高いほうからSHB(STRICTLY HARD BEAN/標高約1350m以上)、HB(HARD BEAN/標高約1050m以上約1350m未満)、EPW(EXTRA PRIME WASHED/標高約900m以上1050m未満)となっています。
グアテマラのグレードと一部同じ名称ですが、グアテマラが7段階なのに対してパナマは3段階なので覚えやすいですね。
パナマ産のコーヒーは全体的にバランスが良く、花や柑橘、ワインなどに例えられる華やかな香りが特徴とされます。
悪く言うと没個性的、とされていたのですが、その中で例外的に独特の爽やかな香りをまとっているのがエスメラルダのものを主とするゲイシャです。
ある有名カッパーに「これはもはやコーヒーではなくティーである」と言わしめたほどの特徴的で高貴な香りは「ゲイシャフレーバー」と呼ばれ、今では各国の愛好家たちから熱烈な支持を受けています。
甘みと香りを主体とするため、焙煎度合は中浅煎り~中煎り程度が推奨されており、抽出はフレンチプレスやエアロプレス、そして丁寧なハンドドリップが適しているとされています。