
Point3:焙煎1・豆の水分を飛ばす
焙煎の目的は科学的には大きく二つ。
「豆の持つ水分を飛ばすこと」と「豆が持つ成分を熱で変化させること」ですが、特に「生豆」を「コーヒー豆」に変える上で重要なのが、前半の水分を飛ばす工程と言えます。
生豆の袋に鼻を近づけて匂いを嗅いで見ると、青くさい、生の野菜や穀物のような香りがします。
豆に水分が残った状態だと、この香りがコーヒーにも出てしまうのです。
最後まで水分が残らずとも、中心部から水分が抜けきっていないとそこだけ温度が上がりづらくなり、外部と内部の煎りむらの原因にもなります。
また、コーヒーの苦味成分のうちのいくつかは水分が多すぎると加水分解を起こし、さわやかで好ましい苦味・酸味ではなく、不愉快な苦味・酸味を生んでしまうというデータもあります。
焙煎後半の成分反応を上手に起こすためにも、この水分抜きの工程は重要なのです。
水分を上手に抜くためには、焙煎が進まないようにしつつもある程度熱が回った状態をキープすることが重要です。
焙煎器を熱源に近づけすぎないようにし、同じ豆の同じ面が熱に当たり続けないようによく攪拌しましょう。
ただし、この工程に時間がかかりすぎてしまうと香りが抜けてしまう可能性もあります。
これは熱の強さや焙煎器の形、豆の量などにもよるのでデータと感覚で覚えていくしかありませんが、焙煎開始からだいたい10分前後に1ハゼが来るように調整するとうまく仕上がるケースが多いようです。
まずはこのタイミングを狙ってやってみて、そこから「もう少し前」「もう少し後」と調整してみるとうまくいきやすいかもしれません。
逆に、焙煎開始から5分以内に1ハゼまでいってしまったり、15分が経過してもハゼが来ないという場合は、火力や熱源からの距離を変えたほうが良いといえるでしょう。
どうしても仕上がりに生臭さが残ってしまうようであれば、生豆の状態でしばらく放置して自然に水分が抜けたものを使用したり、焙煎の途中(1ハゼの始まる前)でいったん火から焙煎器をはずして冷まし、水分がしっかり抜けたところで焙煎を再開する「ダブル焙煎」といった手法を試すという手もあります。
生臭さはなくともどうも苦味や酸味がきつくなってしまう、という場合も水分が抜けきる前に焙煎が進んでいる可能性があります。
特にフルシティ以上の深い焙煎になると熱による分解反応も進むため、この問題が顕著になりやすいようです。
うまく水分を飛ばすことができた豆であれば、たとえ深煎りであっても必要以上の苦味を感じることはなく、すっきりとした「さわやかな苦味」が強くなるはずです。
もちろん味の感じ方や好みには個人差がありますが、他の部分を調整してみてもうまくいかない場合は上記の方法を試してみてはいかがでしょうか。
まとめ3
- 水分を飛ばす工程は、生臭さを消し、香味を良くする上で重要!
- 上手に水分を飛ばせていないと、煎りむらの原因になることも。
- 最初にしっかり水分を抜くためには、熱源に近づけすぎず良く攪拌することが需要。
- 豆の状態などの条件にもよるが、おおよそ10分頃に1ハゼが起こるくらいに調整すると、水分をしっかり飛ばせている可能性が高い。
- 好みにあわせて調整していけばいよいが、あまり早すぎる・遅すぎる焙煎は香味を損なってしまう。
- うまくいかないなら、事前によく自然乾燥させたり「ダブル焙煎」を試してみるのもよいかも。
- 苦味の調整がうまくいかない場合も、水分を飛ばすことを意識すると改善することがある。