
いろいろな条件で比較する
「固有の条件」「特有の条件」はそれぞれ購入したコーヒー豆ごと、抽出した一杯ごとに列挙していく形式で記入しますが、それとは別のページでひとつひとつの条件ごとの対比表を作ってみるのも良いでしょう。
コーヒーの味や香りを左右する条件は無数にあり、複数の条件を変えて抽出しているとどれが原因で変化したのかがわかりにくくなることがあります。
また、一杯ごとに淹れたコーヒーをそれぞれ別のタイミングで飲んで比較する場合、どうしても記憶に頼る形になるため、数値や客観的条件は具体的でも肝心の印象部分があいまいになってしまいがちです。
他の条件はまったく同じで一つだけ条件の違う二杯の(もしくはもっと多くの)コーヒーを並べて味わうことで、そのあいまいさを排してより正確な違いをチェックすることができるのです。
比較する項目としては、以下のものが考えられます。
- 生産国、生産地
同じ品種のコーヒーでも、どこで栽培されたかによって驚くほど風味が変化します。
同じ国の中でも、隣り合った農園であってもまったく異なる味わいになることもある程です。 - 品種
コーヒーは歴史上、生産性や耐病性はもちろん、その時々に求められる味わいを求めて改良され続けてきました。
同じ生産地でも、品種が違えば当然味わいは大きく違ってくるのです。 - 購入店(ロースター)
まったく同じロットのコーヒー豆を使用しても、ロースターが変われば味わいが異なる可能性が高まります。
「その豆のどんな特徴を引き出すべきか」という考え方が、ロースターごとに様々だからです。
コーヒーの味や香りは微妙な条件の違いでも変化するので、焙煎度合が同じでもそこに至るプロセスによっては風味に差が生じます。 - 焙煎度合
ロースターによっては、豆をしっかり研究し尽くしてから販売するため、、同じ豆を複数の焙煎度合で出すことはあまりないかもしれませんが、中には焙煎による味の変化を楽しんでもらおうという人もいます。
また、自分で焙煎する場合はより容易に比較することができるでしょう。
当然ながら、まったく同じ豆を使用しても焙煎の具合によって風味は大きく変化します。 - 挽き目
成分の抽出されやすさはもちろん、お湯が通過するスピードも変わってくるため、挽き目は味わいに大きく関わる条件の一つです。
ミルを選ぶ場合は、電動式にせよ手動式にせよ、できるだけ挽き目を細かく設定できるものを選んだほうがいいでしょう。 - 湯温
コーヒー粉に注ぐお湯の温度によって、抽出されてくる成分は大きく変わってきます。
特に三角ドリッパーやネルを使用する場合は、お湯の注ぎ方によって選択的に抽出することになるので、温度が大きく変わればもう別の種類の飲み物と言っても良いほど味が変わります。 - 時間
抽出開始からどれくらいの時間が経過したかによって、溶け出してくる成分量が大きく変化していくため、時間のかけ方を変えると味わいがかわってきます。
アナログの時計や秒表示のない時計、砂時計などではなく、ストップウォッチを使用したほうが良いでしょう。
また、抽出後の経過時間による味の変化も、別枠で調べてみると面白いかもしれません。 - 抽出量
コーヒー粉を通過するお湯の量によって、できあがりの味わいは当然大きく変わります。
他の条件によってある程度限度ができてしまうため、極端に増やすことはできませんが、逆に減らすことは簡単にできるはずです。 - 器具
何を使ってコーヒーを淹れるかは、おそらくもっとも違いの分かりやすい差になるはずです。
中には高価な器具もあるため、あまり一度にいろいろ買い揃えることは現実的ではありませんが、比較的安価で扱いやすいものからいくつか購入しておくと、(特に初期の)コーヒーの楽しみがぐんと広がります。 - メーカー
特にドリッパー類はいろいろなメーカーから材質も形状もさまざまなものが発売されており、設計のコンセプトや「おいしいコーヒー」の定義、使用を想定するコーヒー豆の種類などがそれぞれ異なっているため、どれを使うかで風味が変わってきます。
プラスチック製の三角ドリッパーなどはどれもそれほど高価なものではないので、有名なメーカー数社分くらいは持っておいても損はないと言えるでしょう。
ペーパーフィルターを使用する製品の場合は、できるだけ純正のものを使用した方がより特徴がはっきりわかるようです。
これらを個別に調べておくことで、一杯だけ淹れる際にもどう調整したら良いかがイメージできるようになってきます。
例えば、
「この産地、焙煎度合はスタンダードな淹れ方だとちょっと苦く感じるはずだから、湯温はやや低めにしよう」
「この豆は前回飲んだときにはいい香りが特徴だと思ったから、そこを際立たせるためにフレンチプレスを使用して淹れよう」
「今日は味の濃いコーヒーが飲みたいから、コーヒー粉は多めで湯温は80℃、3:30くらいかけてじっくり抽出しよう」
といった判断ができるようになってきます。
これらを楽しみながらやっていくことで、コーヒーを味わい、それを表現する技術は自然と上達してきます。
そして、ノートが一冊終わる頃には達成感と共に十分な知識と経験を得ていることでしょう。
自分で作り上げた記録ノートもコーヒーを味わう能力も、共にこれからのコーヒーライフをより楽しいものにしてくれるはずです。