コーヒーがうつすもの|世界のコーヒー事情4

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コーヒーがうつすもの

コーヒーは嗜好品であり、だからこそ時代ごとの価値観を反映してあり方や評価が変わってきた飲み物です。
イスラム教の世界からヨーロッパへ持ち込まれた際には「異教の飲み物」「人を堕落させる水」といった反発があり、紅茶と比べて大衆的で不道徳なものというイメージとされました。
やがて社会全体に受け入れられ、悪いイメージが払拭されると、今度は利益をもたらす作物として植民地化された世界各地で栽培されるようになります。
支配を受けている側としては最初は大きな抵抗があったはずですが、それでもコーヒーはゆっくりと社会に溶け込み、今では生産国や生産地域でコーヒーがソウルドリンクとして親しまれていない地域はほぼありません。
大量生産が進み作物というより工業製品のように扱われるようになると、より均一でより安定した品種が求められるようになります。
人々も品種や生産地の差などはあまり気にせず、できるだけ「普段通り」の味や香りを求めていました。
しかし20世紀も終わり、まるで熱から醒めるように「同じもの」を求める時代が終わりました。
そして、お互いの違いや個性を認め、受け入れようという考えが広まりつつあります。

コーヒー業界を取り巻く変化も、この世相を反映したものと捉えることができます。
いまやコーヒーのパッケージにはコーヒー豆の細かい情報が記載され、いかに個性的で今までなかったものであるかがセールスポイントとして強調されています。
品種や生産地の違いはもちろん、焙煎度合処理方法についても注目されるようになりました。
以前は雑味がなくてクリーンな味に仕上がりやすいウェット方式が良いとされていましたが、最近は個性の出やすいナチュラル(ドライ)方式が見直されている、というのも変化のひとつでしょう。

コーヒーは単純に嗜好品として愛される飲み物であり、同時に政治や経済、歴史、思想など、社会を反映した高度な指標でもあります。
おいしいコーヒーを楽しみ、それを後世にも伝えていきたいと願うことは、同時に人々を悩ませる社会問題を解決し、よりよい世界を願うことと同じことなのです。

これからも引き続き、個性的ですばらしい多様性を持ったコーヒー豆が生み出され、それが世界中で愛され続けていくよう願いながら、おいしいコーヒーを楽しんでいきましょう。

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