ハイブリッド品種
かつて、アラビカ種とカネフォラ種では、自然交配は起こりえないと考えられていました。しかし、東ティモールで一緒に栽培していた両種の間で偶然交配が成立し、ハイブリッド種「ティモール(・ハイブリッド)」が生まれると、その耐病性や耐候性の高さから研究が進められるようになり、現在ではさらにいくつかのハイブリッド種が知られるようになりました。
ティモール(ティモール・ハイブリッド)
東ティモールで発見された、世界初のハイブリッド種です。
アラビカ種とカネフォラ種は、同じアカネ科ではありますが染色体数が違い(アラビカ種44、カネフォラ種22)、近くで栽培しても交配はしないものと考えられていました。
しかし1927年、たまたま染色体数が変異したカネフォラ種がアラビカ種と交配したハイブリッドの新種が発見されます。
「ティモール」、もしくは「ハイブリッド・ディ・ティモール」と呼ばれることになるこの品種は、アラビカ種より耐病性が強く、しかもアラビカ種と交配可能だったことから、サビ病で苦しんでいた各国で研究され、他のハイブリッド種を生み出すきっかけとなったり交配新種の基となったりしました。
ただ、香味自体はカネフォラ種より多少は良い、という程度だったため、ティモール自体が大々的に栽培されることは無かったようです。
現在、東ティモールといくつかの国で少量栽培されていますが、名が知られるほど流通はしていません。
苦味や酸味、香りは控え目ですが、独特の深いコクがあり、全体にマイルドな風味と言われています。
ティモール(ティモール・ハイブリッド) | |||||
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特徴 | 独特の深いコクとマイルドな味わい | ||||
香り | ひかえめ | ややひかえめ | ふつう | ややはなやか | はなやか |
○ | |||||
酸味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | やや刺激的 | 刺激的 |
○ | |||||
苦味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | ややストロング | ストロング |
○ | |||||
コク | さっぱり | ややさっぱり | ふつう | ややしっかり | しっかり |
○ |
カティモール
ティモールとブルボン系カトゥーラの交配品種です。
ハイブリッド品種・ティモールとの交配により、さび病に対する耐性をもつアラビカ種として、世界で初めて実用化されました。
コロンビアやブラジルなど、後に大生産国となる国で、カティモールやその交配種が採用されていったため、20世紀終盤以降はこのラインが中南米の主力品種となりました。
ただ、純粋なアラビカ種と比べるとどうしても風味が劣るため、「世界のコーヒー市場は守ったが品質を低下させた」という評価も一定数あるようです。
カティモール | |||||
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特徴 | 他の品種より風味が劣るため主にブレンド用 | ||||
香り | ひかえめ | ややひかえめ | ふつう | ややはなやか | はなやか |
○ | |||||
酸味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | やや刺激的 | 刺激的 |
○ | |||||
苦味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | ややストロング | ストロング |
○ | |||||
コク | さっぱり | ややさっぱり | ふつう | ややしっかり | しっかり |
○ |
アラブスタ
人工的に交配させた、ティモール以外のアラビカ種とカネフォラ種のハイブリッド品種の総称。
デバマシーやイカトゥなどが含まれます。
アラブスタ | |||||
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特徴 | ティモール系以外の人工ハイブリッドの総称 |
サルティモール
ティモールとブルボン系ヴィラサルチの交配品種です。
ヴィラサルチはコスタリカで発見されたブルボン系の変異種で、一時期ブラジルで栽培されていました。
ブラジルではカティモールが環境的に適合しなかったため、カティモールの元となったカトゥーラと似た性質を持ちつつ環境に適したヴィラサルチと交配させることで、自国で栽培できるハイブリッド種を作ったのです。
サルティモール | |||||
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特徴 | ブラジルで栽培されたハイブリッド | ||||
香り | ひかえめ | ややひかえめ | ふつう | ややはなやか | はなやか |
○ | |||||
酸味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | やや刺激的 | 刺激的 |
○ | |||||
苦味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | ややストロング | ストロング |
○ | |||||
コク | さっぱり | ややさっぱり | ふつう | ややしっかり | しっかり |
○ |
ルイル11
エアルーム(原種)系ルメスダンとブルボン系K7、同じくブルボン系SL28、そしてカティモールを段階的に人工交配させた品種です。
ケニアのルイル地区にあったCOFFEE RESEARCH STATION(カフェリサーチステーション/コーヒー調査所)で開発されたため、ルイルの名が付いています。
ハイブリッドの肝である耐病性はもちろん、SL28から受け継いだ耐乾燥性がさらに強く出ており、生産性も高いという隙のない特徴を備えているとのこと。
しかし、肝心の香味はSL28などに比べて劣るとされており、いまのところそこまで広く栽培されてはいないようです。
ルイル11 | |||||
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特徴 | 何種も交配を重ねた異色の人工交配種 | ||||
香り | ひかえめ | ややひかえめ | ふつう | ややはなやか | はなやか |
○ | |||||
酸味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | やや刺激的 | 刺激的 |
○ | |||||
苦味 | マイルド | ややマイルド | ふつう | ややストロング | ストロング |
○ | |||||
コク | さっぱり | ややさっぱり | ふつう | ややしっかり | しっかり |
○ |